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不動産登記/信託登記

家族信託の受託者変更による不動産登記の手続き

信託不動産の受託者の変更による所有権の移転登記手続き 


受託者の任務が終了したため、新たな受託者が就任するケース

(1) 受託者Aが辞任し、新受託者Bへ変更したとき
 この場合の登記手続きは、AとBが共同して所有権の移転の登記を申請します。登記の原因及び日付は、「年月日受託者変更」とし(※1)、日付は前受託者の任務終了の日(※2)を記載します。

(2) 受託者Aが死亡し、新受託者Bへ変更したとき
 この場合の登記手続きは、Bの単独申請で所有権の移転の登記を申請します。受託者の相続人の関与は必要ありません。これは、受託者の死亡は受託者の任務終了事由に該当するため、受託者の相続人がその権利義務を相続することはないからです(相続人は、その事実を知っているときは、知れている受益者に通知する義務があります)。
 登記の原因及び日付は、「年月日受託者変更」とし、日付は前受託者の死亡日を記載します(信託法75条1項参照)。

(※1)末尾文献によると、新受託者の就任承諾よって受託者の変更が生じるため、登記原因に辞任や死亡といった任務終了の事由を記載する必要はないとしています。
(※2)受託者が、委託者及び受益者の同意を得て辞任した場合、その他信託行為で定めた方法によって辞任した場合の登記原因日付は、原則、新受託者が就任した日としています(信託法75U参照)。

受託者変更の登記原因証明情報の範囲と実務上の考察

登記原因証明情報


 権利に関する不動産の登記の申請においては、その原因となる事実又は法律行為を証明するため、申請人は、申請情報と併せて登記原因証明情報を登記所へ提出する必要があります。

 それでは、⑴受託者が辞任し新受託者が就任した場合、⑵受託者が死亡し新受託者が就任した場合は、それぞれどのような登記原因証明情報が必要になるでしょうか。

 まず、辞任の場合、信託行為に別段の定めがなければ、受託者は、委託者及び受益者の同意を得て、辞任することができます(信託法57条T本文)。つまり、受託者の辞任の申出に対し、委託者及び受益者の同意が必要であり、辞任に基づく受託者変更の登記原因証明情報は、これらの行為が確認できるものでなければならないと考えます。
 ところで、登記原因証明情報は、一の書面に限らず複数の書面で構成されることもあります。これに関し、委託者及び受益者の同意を証する証明書(同意書)を登記原因証明情報の一部として登記所へ提供するべきか否か、実務上、見解が分かれています。さらに、同意書の提供が必要と考えた場合、同意書に記名押印した者(委託者、受益者)の印鑑証明書の提供が必要とする考えもあります(不動産登記令 第7条第1項5号(ハ)、同19条第2項参照)。私見では、登記を申請する司法書士は、委託者及び受益者の同意があったことを書面にて確認することは重要と考えますが、これに実印の押印と印鑑証明書を要求することについては、現状、明確な基準はないように思えます。
 次に、受託者が死亡し、新受託者が就任したことによる所有権の移転の登記申請においては、受託者の死亡したことの事実の分かる戸籍が必要になります。信託法の規定に基づき委託者と受益者の合意によって新受託者を選任した場合は、その選任を証する書面、及びにこれにかかる印鑑証明書の提供が必要とされています。

以上

お断り
・本内容には、執筆時点での登記実務に基づき、筆者が一部推察した事項が含まれています。
・参考文献として、「3訂版 わかりやすい信託登記の手続(日本法令不動産登記研究会2024/6/21)
・実際の案件に関しては、事前に管轄の登記所へお尋ねください。



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