相続・遺言・遺産承継
・相続手続きを進めている最中に、さらに親族が亡くなった場合、相続関係が複雑になることがあります。 ・代襲相続と再転相続の違いを正確に理解することが重要
・本記事では、具体的なケースごとに注意点と対応方法を詳しく解説します。
相続手続き中に親族が亡くなった場合の対応と注意点
Aさんは、高齢の母が亡くなったため相続手続きを進めていました。ところが、その途中で母の弟(Aさんの叔父)が亡くなったことを知りました。叔父には子がおらず、Aさん自身もほとんど付き合いがありません。
この場合、母の相続を進める上で注意すべきポイントはあるのでしょうか?
☆叔父の死亡日が重要なポイント
叔父の死亡日が、母の死亡日より前か後かによって、Aさんの相続関係が変わります。
1. 相続の開始〜叔父が母より後に死亡〜(代襲相続のケース)
Aさんは、叔父の「代襲相続人」になる可能性があります。つまり、叔父には子がいないため、通常は親や兄弟姉妹が相続人となります。しかし、兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合、その子(甥・姪)が代襲相続人となります。
☆Aさんが注意すべき点
- ・叔父の相続財産には、負債(借金)も含まれる可能性があります。
- ・叔父の相続を希望しない場合は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で「相続放棄」の手続きをする必要があります。
- ・母の相続手続きだけを進めて叔父の相続を放置していると、単純承認(=相続を受け入れたとみなされる)となり、後日、他の相続人と叔父の遺産分割の手続きが必要になる可能性があります。叔父に負債があった場合は、原則、法定相続分の割合で負担することになります。
2. 相続の開始〜叔父が母より先に死亡〜(再転相続のケース)
この場合、叔父の遺産は一度母に帰属し、その後、母の死亡によってAさんが承継することになります。このような状況を「再転相続」と呼ぶことがあります。「再転相続」とは、一般的に「相続の承認や放棄を決める前(熟慮期間中)に相続人が亡くなり、その相続権が次の相続人(二次相続人)に移ること」を指します。
☆Aさんが注意すべき点
- ・叔父の相続を希望しない場合は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で「相続放棄」の手続きをする必要があります。再転相続における「相続開始を知った日」については、重要な判例があります(後述)。
- ・一方、母の相続を放棄した場合は、叔父の相続を承認したり、放棄することはきません。この点、叔父の相続(一次相続)と母の相続(二次相続)のいずれかを承認する又は放棄する場合は、その可否や手続きの順序を慎重に検討する必要があります。
ご注意
上記の事例では、叔父の遺言の有無や、Aさんの他の兄弟の存否については考慮しておりません。実際の案件に関しては、最寄りの法律専門家へご相談ください。
再転相続の熟慮期間について
通常、相続放棄の期限は「相続開始を知ってから3ヶ月以内」とされていますが、再転相続の場合、最高裁令和元年8月9日判決により、「二次相続の発生により自分が一次相続の相続人となることを知ってから3ヶ月以内」であれば、一次相続の相続放棄が可能と判断されています。
再転相続における「相続開始を知ってから3ヶ月以内」
- 例えば、Aさんが叔父が亡くなったことは以前から知っていたが、今般、母が死亡した結果、自分が叔父の相続人であることを知ってから3ヶ月以内であれば、叔父の相続を放棄できる可能性があります。
- これまでは、再転相続が開始した場合の熟慮期間の基準日については明確な基準はありませんでしたが、この判決によって、実際に自分が一次相続の相続人となることを認識した時点が基準となることが明確になったといえます。
相続手続きは早めの対応が重要!
親族の相続が連続して発生すると、思わぬ負債を引き継ぐ可能性もあるため、適切な判断が必要です。
相続の開始/早めに確認すべきポイント
- ・相続放棄の期限は、原則、相続開始を知ってから3ヶ月以内
- ・再転相続が発生した場合は、一次相続を承認するか放棄するかの決定が最優先!
- ・手続きが複雑になるため、司法書士等の法律専門家への相談がおすすめ!
相続の専門家である司法書士に相談することで、適切な手続きをスムーズに進められます。相続の問題は早めに対応しましょう!