相続・遺言・遺産承継
遺言と不動産登記手続き
テーマ
事例紹介
Aさんは平成◯年に「自宅建物を長男Bに相続させる」という内容の遺言書を作成しました。その後、Aさんは自宅建物(以下「S建物」)を解体し、滅失登記を行った上で新たな建物(以下「S'建物」)を建築し、建物表題登記および保存登記を完了させました。今般、Aさんが亡くなり、Bさんは遺言書を使って新築のS'建物の所有権の移転登記手続きをしようと考え、司法書士事務所を訪れましたが、果たしてこの登記手続きは可能でしょうか?
遺言対象の建物を建て替えた場合の遺言の効力と登記手続きについて
事例紹介
Aさんは平成◯年に「自宅建物を長男Bに相続させる」という内容の遺言書を作成しました。その後、Aさんは自宅建物(以下「S建物」)を解体し、滅失登記を行った上で新たな建物(以下「S'建物」)を建築し、建物表題登記および保存登記を完了させました。今般、Aさんが亡くなり、Bさんは遺言書を使って新築のS'建物の所有権の移転登記手続きをしようと考え、司法書士事務所を訪れましたが、果たしてこの登記手続きは可能でしょうか?
遺言内容と登記申請の可否についての考察
ケース1:
ケース2:
さて、登記が受理されたとしても、Aさんの遺言が新築建物まで含める意思があったのかを巡って相続人間で争いが生じる可能性があります。他の相続人が「S'建物は遺言の対象ではない」と主張し、所有権移転登記の抹消登記請求を求めて訴訟を提起する可能性がある点にも注意が必要です。この場合、AさんがS建物を解体した後に遺言書を作成し直さなかった理由や、建て替えの背景事情、Aさんの生活実態(Bさんとの同居の有無)などの事情が重要な判断要素となります。
ケース3:
建物の特定要素が詳細に記載されている場合
遺言書にS建物の特定要素として「所在地番、家屋番号、種類、構造、床面積」のすべてが記載されている場合、通常、これらの要素が新築されたS'建物と一致しないケースが多いため、S'建物は、遺言の対象財産から外れると考えられます。Bさんが登記申請を行うためには、Aさんが新築したS'建物も遺言の対象財産であるとするAさんの意図がわかるような資料(例えば、建て替えの経緯を説明する資料や、相続人全員の同意書など)の提出を求められることがあります。特に、公正証書遺言では、建物の登記事項(所在地番、家屋番号、種類、構造、床面積)が全て記載して作成されることが多いため、建物の特定が厳格化される一方、今回のように新築した建物が遺言の対象から外れてしまうリスクが高まるといえます。ケース2:
建物の所在地番および家屋番号のみが記載されている場合
遺言書にS建物の特定要素として「所在地番および家屋番号」のみが記載されている場合は、特定の方法がある程度緩やかであるため、S'建物の家屋番号とS建物の家屋番号が同一であれば、遺言書レベルでは登記申請は可能と考えられます。登記所が付与する家屋番号については、建物を建て替えた場合の滅失登記および表題登記において、新旧の建物で同一の家屋番号が使われる場合もあれば、別の番号(例:◯◯番◯の2)が付与される場合もあります。現状、登記所の運用や申請人の意向に委ねられています。さて、登記が受理されたとしても、Aさんの遺言が新築建物まで含める意思があったのかを巡って相続人間で争いが生じる可能性があります。他の相続人が「S'建物は遺言の対象ではない」と主張し、所有権移転登記の抹消登記請求を求めて訴訟を提起する可能性がある点にも注意が必要です。この場合、AさんがS建物を解体した後に遺言書を作成し直さなかった理由や、建て替えの背景事情、Aさんの生活実態(Bさんとの同居の有無)などの事情が重要な判断要素となります。
ケース3:
建物の住所のみが記載されている場合
遺言書に建物の特定要素が「〜市〜区◯◯番地所在の建物」とだけ記載されている場合は、物理的な変動(増築や建て替え)が生じた場合でも、当該住所に所在する建物全体が遺言の対象と解釈される可能性が高いといえます。このような記載方法は、将来的な建て替えを見据えた柔軟な特定方法といえ、Aさんが新築後の建物も当然に遺言の対象財産に含む意図があったと解釈することができ、新築後の建物についての登記申請は可能であると考えられます。司法書士に相談する重要性
遺言を使って不動産を特定の相続人へ承継させる場合は、土地や建物の特定方法が大きな影響を与えます。土地なら分筆登記や合筆登記によって、建物なら増築や再建築等によって、遺言書で特定した内容に変動が生じた場合の登記の可否は、基本的には遺言書の表現に依拠します。したがって、遺言書作成においては、将来の変動を見据えた柔軟な表現を用いることが推奨されます。遺言を活用した不動産の承継を検討される方は、相続・遺言・登記の専門家である司法書士に相談することが重要です。不動産の登記や遺言書の作成については、司法書士安西総合事務所が的確なアドバイスとサポートを提供いたします。お気軽にご相談ください。