相続・遺言・遺産承継
遺言と相続
テーマ
先週のGWも昨年と同様、外出はできるだけ制限して、自宅でたまった本を読んでいました。
その中の一冊
「障害のある子が「親なき後」も幸せに暮らせる本」
この本は、ダウン症の長女をもつ著者鹿内幸四朗さんが同じような知的障がいのある子を持つ保護者の方へ向けて書かれた内容となっていますが、中身は我々法律家にとっても非常に考えさせられる内容でした。
障がいのある子を一生守るためにはどうすればいいのか、これは非常に難しいテーマですが、現在の成年後見制度だけに頼っていては不十分であり、親自身による自前の対策は必須です。特に子が未成年のうちに親が法定代理人としてどのような有効な対策を取れるか、これが重要とあります。これについて、障がいのある子が未成年の間に親が法定代理人として、親自身(※1)、又は第三者との間で子のための任意後見契約を締結し、子が成年に達したとき以降の子の財産管理等は、任意後見人が行うといったスキームが紹介されています。
また、親は自分が亡くなったあとの財産承継をスムーズにさせるため遺言書の作成が効果的としていますが、ここで重要なことは、障がいのある子に不必要に財産を取得させないということです。このような親の気持ちとして、少しでも多くの財産を我が子に遺したいと考えることは実にあたりまえのことですが、受け取ったあとの財産管理や処分に支障をきたすおそれがあるなら、はじめから子に財産は渡さない方がいいこともあります。この場合、たとえば、自分が亡くなったあとの子の面倒を妻が看るとった想定なら、「全財産を妻に相続させる(※2)。」といった遺言を残し、その財産を子の生活や福祉のために妻に使ってもらうことが賢明なのかもしれません。
これについては、遺言の内容を深く考えすぎるとかえって何もできない状態になってしまうので、それくらいならたった一言、全財産を妻に相続させる。とりあえずはこのような遺言を準備しておくことからはじめてみてもいいと思います。
本書は、これら以外にも障がいのある子を持つ親がしておくべき財産対策として著者自身の体験を通じて得た知識や考えが載っています。ただ、一方で、現状の福祉制度の下でベストな解決方法を見出すことは難しく、将来の法改正や社会情勢の変化等に希望をいただきながら、今できるベターな選択を選ぶことが大切とあります。
(※1)
・原則、利益相反行為と考えられるため、実際の案件については専門家との相談が必要と考えます。
【追記】
(※2)
結論
早いうちから準備するとりあえず遺言のススメ
先週のGWも昨年と同様、外出はできるだけ制限して、自宅でたまった本を読んでいました。
その中の一冊
「障害のある子が「親なき後」も幸せに暮らせる本」
この本は、ダウン症の長女をもつ著者鹿内幸四朗さんが同じような知的障がいのある子を持つ保護者の方へ向けて書かれた内容となっていますが、中身は我々法律家にとっても非常に考えさせられる内容でした。
障がいのある子を一生守るためにはどうすればいいのか、これは非常に難しいテーマですが、現在の成年後見制度だけに頼っていては不十分であり、親自身による自前の対策は必須です。特に子が未成年のうちに親が法定代理人としてどのような有効な対策を取れるか、これが重要とあります。これについて、障がいのある子が未成年の間に親が法定代理人として、親自身(※1)、又は第三者との間で子のための任意後見契約を締結し、子が成年に達したとき以降の子の財産管理等は、任意後見人が行うといったスキームが紹介されています。
また、親は自分が亡くなったあとの財産承継をスムーズにさせるため遺言書の作成が効果的としていますが、ここで重要なことは、障がいのある子に不必要に財産を取得させないということです。このような親の気持ちとして、少しでも多くの財産を我が子に遺したいと考えることは実にあたりまえのことですが、受け取ったあとの財産管理や処分に支障をきたすおそれがあるなら、はじめから子に財産は渡さない方がいいこともあります。この場合、たとえば、自分が亡くなったあとの子の面倒を妻が看るとった想定なら、「全財産を妻に相続させる(※2)。」といった遺言を残し、その財産を子の生活や福祉のために妻に使ってもらうことが賢明なのかもしれません。
これについては、遺言の内容を深く考えすぎるとかえって何もできない状態になってしまうので、それくらいならたった一言、全財産を妻に相続させる。とりあえずはこのような遺言を準備しておくことからはじめてみてもいいと思います。
本書は、これら以外にも障がいのある子を持つ親がしておくべき財産対策として著者自身の体験を通じて得た知識や考えが載っています。ただ、一方で、現状の福祉制度の下でベストな解決方法を見出すことは難しく、将来の法改正や社会情勢の変化等に希望をいただきながら、今できるベターな選択を選ぶことが大切とあります。
(※1)
・原則、利益相反行為と考えられるため、実際の案件については専門家との相談が必要と考えます。
【追記】
単独親権者又は共同親権者の一方あるいは双方を任意後見受任者とする任意後見契約は民法826条一項に反して無権代理行為であるとする趣旨の法務省民事局第一課長回答があります(令和4.1.24付回答)。
(※2)
・遺言を残さないと、子と妻との間で遺産分割協議が必要となりますが、家族構成によってはこれが非常に厄介な問題となることがあります。
・子の遺留分の問題は残りはますが、現在の法制度内で対策できるベターな選択肢だと思います。結論