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建物表題登記、土地分筆登記

不動産の表題登記手続き

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〜代位による土地の分筆登記の実現可能性について〜


【問】 土地の一部について仮処分の登記をする場合には、その前提として代位による分筆の登記を申請する必要があるが、当該土地の所有者または隣接地所有者の同意・承諾が得られない場合は、どのようにして処理するのか。

【答】 代位による分筆の登記の場合も通常の分筆の登記と同様、申請地と隣接地との境界を確認できない限り、不動産法25条第11号の規定により却下される。

【解説】 代位による分筆の登記であっても一般の登記申請の通則に従うことになるため、分筆地と隣接地との境界を明らかにする必要があります。以下、最高裁判所第3小法廷令和5年10月6日決定の内容に基づき、事例を検証してみます。

最高裁判所第3小法廷令和5年10月6日決定

事例 
 Aさんは、Bさんの所有する一筆の土地の一部分について時効取得が成立したとして、この一部分についての所有権移転登記請求権を保全するために、一筆の土地全体に対し処分禁止の仮処分を求めました。これに対し、原審である大阪高裁は、保全の必要性がないと判断し、Aさんの申立てを却下しました。Aさんはこの決定を不服とし、最高裁に許可抗告をしました。
 最高裁は、当該仮処分命令は、当該土地の全部についてのものであることをもって直ちに保全の必要性を欠くものではないと解するが相当とし、原審の決定を破棄し、債権者が分筆登記の申請を行うことができない等の特段の事情の有無、登記請求権の存在や内容、相手方の不利益の内容や程度等について審議をさらに尽くすよう本案を差し戻しました(最高裁判所第3小法廷令和5年10月6日決定)。

 最高裁は、土地の一部分に関する所有者移転登記請求権を保全するために、土地全体に対して処分禁止の仮処分を行うことについて、原則として保全の必要性を認めないとの従来の立場を維持しています。しかし、分筆の登記が困難であるなどの特段の事情がある場合は、当該登記請求権を保全するため、一筆の土地全体に対する処分禁止の仮処分の登記を認める可能性を示したといえます。

以下、分筆登記と代位登記に関する登記制度特有の問題点を検討します。

・一筆の土地の一部に対する仮処分の登記の可否

 もしAさんが時効取得した範囲において処分禁止の仮処分を求めれば、裁判所は、保全の必要性を確認し、特段問題がなければ、これを発令するものと考えます。しかし、これでは仮処分の登記が実現できません。なぜなら、一筆の土地の一部に対する権利の登記は、その前提として、土地の分筆登記を了する必要があるためです。

・分筆の登記

 不動産登記法では、土地の分筆の登記は、土地の登記記録の表題部に記録された所有者、又は所有権の登記名義人の申請によってすることができます(不動産登記法39条1項)。これは、土地の分筆は、一筆の土地を取引の適するような状態に変更するものであるから、原則として、その土地の所有者の(申請)意思によってのみするものと解されているためです。したがって、債権者のような利害関係人が他人の土地を分筆登記することは認められていません。では、当該仮処分の登記の前提として、債権者が代位によって分筆の登記を申請することはできるのでしょうか。登記先例は、債権者は自己の権利を保全するため、債務者である不動産の所有者(所有権登記名義人)に代わり、分筆の登記を申請することを認めています(これを「代位登記」といいます)。ただし、代位による登記であっても、一般の登記申請の通則に従うことになるため、分筆元地の範囲ないし隣接地との境界の確認を要する点は、通常の分筆登記を申請する場合と同様であって、分筆元地と隣接地との境界を明らかにする必要があります。

代位による分筆の登記は、可能か。

 一筆の土地の一部について処分禁止の仮処分命令が発令されても、登記官としては、一筆単位(登記記録毎)で受け付けるため、このままでは登記ができず、保全執行がなされないという事態になります。では、どうすればいいか。まず、対象地を分筆登記して、分筆先地をその対象とする方法が考えられますが、分筆登記は、所有権登記名義人にのみ申請権限が付与されているところ、所有権登記名義人は本案の相手方であって、このような相手方が分筆登記を申請するはずはありません。したがって、債権者は、代位による分筆登記を申請することになりますが、これは現在の登記実務では、極めて困難、あるいは不可能と考えます。保全処分の下で、密行性を維持しつつ、債権者(実際には土地家屋調査士)が債務者の土地を踏査し、隣地関係者らとの境界確認を行い、地積測量図を作成することは、現行法の枠組みでは非常に困難です。しかし、これがまったく不可能かというと、一定の条件が整えば、その実現が見えてくる可能性もあります。
 以下、私見ですが、対象となる土地が、法14条地図が備え付けられている地域、特にここ10年ほどの間に作成された地図がある場合、あるいは平成17年以降に作成された地積測量図が存在する場合には、事情が変わります。このような土地では、図面をもとに現地の境界を正確に復元することが可能であるとされており、既存の杭が図面と公差の範囲内で一致している場合には、分筆登記を申請する際に隣地所有者との境界立会いを省略することができると考えられます。さらに、このような条件が満たされている場合、既存の地積測量図を作成した土地家屋調査士が事前に登記官と綿密に調整をすることで、代位による分筆登記の実現可能性が見えてきそうです。

以上

※本記事は、2024年10月25日時点の内容です。
※実際の案件に関しては、弁護士、又は最寄りの土地家屋調査士にご相談ください。

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