テーマ
「第三債務者と執行供託について(義務供託)」
質問
わたしは,ビルの一室を店舗として借りており,ビルオーナーに毎月25万円の賃料を支払っています。このたび,裁判所からわたしを<第三債務者>とする債権差押命令が相次いで2通届きました。差押金額はいずれも100万円を超えています。この場合の供託の手続きについて教えて下さい。
回答
各差押金額の合計額が賃料の額を超える場合(このような状態を「差押えが競合」するといいます。)には,賃借人である第三債務者は,差し押さえられた賃料全額を債務履行地の供託所へ供託しなければなりません(民事執行法第156条第二項)。
供託の申請方法は,窓口申請,郵送申請又はオンライン申請の方法によってすることができます。また,供託金の入金方法として,現金を持参する方法(管轄供託所が現金取扱庁の場合),供託書提出後に指定の銀行に供託金を振り込む方法,その他,インターネットバンキングを利用した電子納付による方法があります。なお,質問のように賃料などの継続性のあるものは,供託カードの交付を申し出ることにより,次回以降の供託の際,手続きの一部を簡略化することができます。
解説
賃料債権が差押えされた場合には,賃借人である第三債務者は,差押債権者の取り立てに応じ,直接,差押債権者に対して,差し押さえられた賃料の支払いをすることも、または,供託することもできます。ただし、「差押えが競合」する場合は,第三債務者が自分の判断で支払いをすることは認められず,差押えされた部分に相当する金銭を供託しなければならないとされています(民事執行法第156条第二項)。これは,第三債務者が供託しなければ債務の免責がされないという意味で「義務供託」と呼ばれています。この供託によって,債務弁済の効果が生じ、差押債権者にも対抗することができます。なお、供託をしたときは,「事情届」を供託書とともに裁判所へ提出する義務があります(民事執行法第156条第三項)。
ところで,差押えが競合すると,第三債務者が債務を免れる方法は,供託以外にはなく,また第三債務者は,差押えの有無にかかわらず,賃料弁済期の経過により,現実の履行遅滞の責任を免れることはできないとされています。仮に,弁済期の経過後に供託する場合については,弁済期から供託の日までの遅延損害金を付して供託する必要がありますので注意が必要です。なお、このような「義務供託」の場合,第三債務者は,供託のために要する交通費や書類等の作成費用等を一定のものに限って請求することができます(民事訴訟費用等に関する法律第28条の2第一項参照)。
以上です。
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