相続・遺言・遺産承継
遺言書の作成
テーマ
質問
遺言書の作成を検討していますが、現在、私には子,妻はおらず、兄弟姉妹が5人います。自分が亡くなった後の財産は、身の回りの世話をしてくれている2人の妹(A,B)に分けたいと考えていますが、分割の方法については、二人で話し合って分割してもらって構わないと考えています。
どのような遺言内容にすればいいでしょうか。
回答
<公正証書遺言書の概要>
(一例)「遺言者は、私の有する全財産を、私の妹A、妹Bに相続させます。ただし、分割の方法は、この二人で話し合って決めてください。」
回答及び解説
相続人に財産を相続させるといった内容の遺言を作成する場合、現在の遺言公正証書では、「相続させる」旨の遺言が非常に多く見受けられます。詳細な理由については割愛しますが、この遺言書を使って、不動産の登記を申請する場合、受遺者である相続人からの単独で登記申請をすることができ、きわめて実務的な遺言書と言えます。
ただし、「相続させる」旨の遺言の内容と異なる内容の遺産分割協議を行った場合、その効力に関しては、相続人全員の合意があっても遺言と異なる内容の遺産分割協議はできず、仮に同協議を行っても、登記実務上、それは贈与や交換契約といった新たな処分行為と解され、遺言による相続登記と新たな処分行為を原因とする移転登記の二つを経由する必要があるとする見解があるので注意が必要です(下記質疑応答/登記情報636号参考)。
さて、今回のケースでは、遺言者の希望としては、遺産は二人の妹に分けたいが、分割の方法に関しては、二人で自由に決めて下さいというものであり、遺言書には、財産を特定の相続人へ相続させることだけでなく、併せて分割方法についても記載しておく方が無難と言えます。
なお、遺言の効力が生じ、A,B間で特定の不動産に関してはAが相続するという内容の遺産分割協議をした場合、遺言書と遺産分割協議を提供して、当該不動産を遺言者名義からA名義とする相続登記は可能とする質疑応答があります(下記参照)。
以上です。
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参考質疑応答
1
「相続させる」旨の遺言と分割方法の協議(登研565号)
○要旨 共同相続人中の2名に相続させ、分割の方法はその2名の協議で決める旨の遺言がある場合、遺言書及び当該2名の相続人による遺産分割協議書を添付してする相続登記の申請はすることができる。
▽問 相続人がABCの3人であるところ、「ABに自己の全財産を相続させる。但分割の方法についてはA・Bの協議にて決定すること」との遺言書と、A・Bによる遺産分割協議書を添付してA・B名義に相続登記をすることが可能と考えますが、いかがか。
◇答 御意見のとおりと考えます。
※追記
比較事例として、登記研究622号カウンター相談110(法定相続人の一部を除く相続分の指定と遺産分割協議)
2
「相続させる」旨の遺言と異なる遺産分割(登研546号)
○要旨 特定の不動産を「長男A及び2男Bに各2分の1の持分により相続させる。」旨の遺言書とともに、A持分3分の1、B持分3分の2とするA及びB作成に係る遺産分割協議書を添付して、当該持分による相続登記の申請はすることができない。
▽問 共同相続人が数名存するときに、特定不動産を「長男A及び2男Bに各2分の1の持分により相続させる。」旨の遺言がなされましたが、この持分と異なる遺産分割協議(A持分3分の1、B持分3分の2)をA及びBにおいて行った後、右遺言書とともに、この遺産分割協議書を添付して、A持分3分の1、B持分3分の2とする相続登記の申請はできないものと考えますが、いかがでしょうか。
◇答 御意見のとおりと考えます。
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(後記
お子様のいらっしゃらない方は最近では少なくありませんが、遺言書を作成しておかないと、夫が亡くなったあとの遺産の分割に関し、妻と夫側の兄弟姉妹(または甥,姪)の協議が必要となり、非常に苦労することがケースが多くあります。また、兄弟姉妹には遺産に関し遺留分の制度がないことからも、あらかじめ遺言書を作成しておけば、故人の意思も尊重され、遺言書とおりに滞りなく手続を進めることができます。
ただし、
相続させる旨の遺言と遺産分割協議
質問
遺言書の作成を検討していますが、現在、私には子,妻はおらず、兄弟姉妹が5人います。自分が亡くなった後の財産は、身の回りの世話をしてくれている2人の妹(A,B)に分けたいと考えていますが、分割の方法については、二人で話し合って分割してもらって構わないと考えています。
どのような遺言内容にすればいいでしょうか。
回答
<公正証書遺言書の概要>
(一例)「遺言者は、私の有する全財産を、私の妹A、妹Bに相続させます。ただし、分割の方法は、この二人で話し合って決めてください。」
回答及び解説
相続人に財産を相続させるといった内容の遺言を作成する場合、現在の遺言公正証書では、「相続させる」旨の遺言が非常に多く見受けられます。詳細な理由については割愛しますが、この遺言書を使って、不動産の登記を申請する場合、受遺者である相続人からの単独で登記申請をすることができ、きわめて実務的な遺言書と言えます。
ただし、「相続させる」旨の遺言の内容と異なる内容の遺産分割協議を行った場合、その効力に関しては、相続人全員の合意があっても遺言と異なる内容の遺産分割協議はできず、仮に同協議を行っても、登記実務上、それは贈与や交換契約といった新たな処分行為と解され、遺言による相続登記と新たな処分行為を原因とする移転登記の二つを経由する必要があるとする見解があるので注意が必要です(下記質疑応答/登記情報636号参考)。
さて、今回のケースでは、遺言者の希望としては、遺産は二人の妹に分けたいが、分割の方法に関しては、二人で自由に決めて下さいというものであり、遺言書には、財産を特定の相続人へ相続させることだけでなく、併せて分割方法についても記載しておく方が無難と言えます。
なお、遺言の効力が生じ、A,B間で特定の不動産に関してはAが相続するという内容の遺産分割協議をした場合、遺言書と遺産分割協議を提供して、当該不動産を遺言者名義からA名義とする相続登記は可能とする質疑応答があります(下記参照)。
以上です。
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参考質疑応答
1
「相続させる」旨の遺言と分割方法の協議(登研565号)
○要旨 共同相続人中の2名に相続させ、分割の方法はその2名の協議で決める旨の遺言がある場合、遺言書及び当該2名の相続人による遺産分割協議書を添付してする相続登記の申請はすることができる。
▽問 相続人がABCの3人であるところ、「ABに自己の全財産を相続させる。但分割の方法についてはA・Bの協議にて決定すること」との遺言書と、A・Bによる遺産分割協議書を添付してA・B名義に相続登記をすることが可能と考えますが、いかがか。
◇答 御意見のとおりと考えます。
※追記
比較事例として、登記研究622号カウンター相談110(法定相続人の一部を除く相続分の指定と遺産分割協議)
2
「相続させる」旨の遺言と異なる遺産分割(登研546号)
○要旨 特定の不動産を「長男A及び2男Bに各2分の1の持分により相続させる。」旨の遺言書とともに、A持分3分の1、B持分3分の2とするA及びB作成に係る遺産分割協議書を添付して、当該持分による相続登記の申請はすることができない。
▽問 共同相続人が数名存するときに、特定不動産を「長男A及び2男Bに各2分の1の持分により相続させる。」旨の遺言がなされましたが、この持分と異なる遺産分割協議(A持分3分の1、B持分3分の2)をA及びBにおいて行った後、右遺言書とともに、この遺産分割協議書を添付して、A持分3分の1、B持分3分の2とする相続登記の申請はできないものと考えますが、いかがでしょうか。
◇答 御意見のとおりと考えます。
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(後記
お子様のいらっしゃらない方は最近では少なくありませんが、遺言書を作成しておかないと、夫が亡くなったあとの遺産の分割に関し、妻と夫側の兄弟姉妹(または甥,姪)の協議が必要となり、非常に苦労することがケースが多くあります。また、兄弟姉妹には遺産に関し遺留分の制度がないことからも、あらかじめ遺言書を作成しておけば、故人の意思も尊重され、遺言書とおりに滞りなく手続を進めることができます。
ただし、