未成年者・親権者間の利益相反行為について(相続放棄編)|戸塚区・泉区・栄区の不動産登記や相続手続きは、司法書士安西総合事務所にお任せください。

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相続・遺言・遺産承継

遺産分割と登記


テーマ

「未成年者・親権者間の利益相反行為について(相続放棄編)」


質問

 亡夫Aの相続について、相続人である妻B,長男C(未成年者)及び長女D(未成年者)が以下の行為を行う場合、特別代理人の選任は必要でしょうか?

@Bのみが相続放棄をし、C,Dが遺産分割協議により2分の1ずつ相続する場合

AC,Dが相続放棄をし、Bが単独で相続する場合

BB,C及びDの全員が相続放棄をする場合



回答及び解説

 @の遺産分割についての回答及び解説はこちらをご覧ください。

 相続放棄についてですが、共同相続人の一部が相続放棄をすると、その相続に関しては、その者ははじめから相続人とならなかったものとみなされ、その結果として、相続分の増加する相続人が生じることになるのであって、相続放棄は、相続放棄する者とそれにより相続分が増加する者との利益が相反する関係にあるとは明らかであり、利益相反に該当し得ると解されています(最判昭53.2.24)。
 上記Aについて、Bが、C,Dの法定代理人として相続放棄をすることは、結果、Bの相続分が増加することになるので、利益相反行為に当たり、特別代理人の選任が必要になります(※不要とする先例もありますー下記参照)。
 では、Bについてはどうでしょうか。たとえば、相続債務が多額のため、相続人の全員が相続放棄をする例は珍しくありませんが、この場合も特別代理人の選任が必要でしょうか。これに関して、

共同相続人の一人である親権者自身が未成年者に先立ち、または未成年者と同時に相続放棄をする場合には、その行為の客観的性質からみて利益相反行為になるとはいえないと解されています

(後見人の事案につき、最判昭53.2.24 同判決は、後見に限らず、親権の場合にも妥当すると解されています)。
 したがって、Bが自らの相続放棄とともに、C,Dの法定代理として相続放棄をする場合は、特別代理人の選任は不要と解されています。

なお、子である未成年者が二人以上いる場合の注意点はこちらをご覧ください。

以上です。

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参考文献 

改訂版「利益相反行為の判断と処理の実際」新日本法規出版

判例
参考サイト(裁判所「判例情報」のサイトより。)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=53246&hanreiKbn=02
裁判年月日  昭和53年02月24日
法 廷 名 最高裁判所第二小法廷
判 示 事 項   
共同相続人の一人である後見人が他の共同相続人である被後見人を代理してする相続の放棄が利益相反行為にあたらない場合
※なお、本判決に対しては、後見人が被後見人の相続放棄を通じ、自己あるいは特定の被後見人の利益を図ることは可能であり、利益相反行為に当たると解すべきであるとする反対説もあります。
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(※)補足
 上記Aの事例に関して、利益相反行為にならず、特別代理人の選任を要しないとする先例があります(昭和25.4.27民甲1021、昭和35.10.27民甲2659)。しかし、この先例は、上記最高裁判決の出される前に発出されたものでり、現時点で妥当とは言えないとする見解があります。また、家庭裁判所の実務においても、特別代理人が選任されるのが通常の取扱いとなっています。
(参考文献;「親権・未成年後見の法律と登記」青山修 著)


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