遺贈による物権変動と遺留分減殺請求権の行使との関係について|戸塚区・泉区・栄区の不動産登記や相続手続きは、司法書士安西総合事務所にお任せください。

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追記

ご注意)下記内容は、平成30年民法相続改正前の情報に基づいた内容です。


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「遺贈による物権変動と遺留分減殺請求権の行使との関係について」


質問

 遺言者名義の特定不動産をAに遺贈する旨の遺言に基づき、Aは、自己の名義に所有権の移転登記をしたあと、当該不動産を第三者へ売却し所有権の移転登記を済ませました。その後、遺留分を侵害されたと主張する相続人から、Aに対し、遺贈の目的物である当該不動産につき遺留分減殺請求権の行使がありました。
 この場合、遺贈と遺留分減殺請求権との関係はどのようになるのでしょうか。

回答及び解説

 遺留分を侵害する贈与の効力は、減殺請求によって、その限度で遡及的に消滅し、受贈者は無権利者となるので、贈与の目的物を第三者に譲渡しても第三者は権利を取得することができないことになります。しかし、これを貫くと取引の安全を害するので、原則として第三者には減殺請求することはできず、受贈者は価額を弁償すべきものとし、ただ第三者が悪意の場合には、取引の安全を害することはないので、第三者に減殺請求することが可能です(民法第1040条参照)。
 これによって、取引の安全と遺留分権利者の権利の保護との調整を図っています。なお、この民法第1040条の規定は、遺贈の場合や相続させる旨の遺言についても類推適用があるとされています<参考;最判昭57.3.4、最判平10.3.10、最判平11.12.16>。
 なお、遺留分権利者が受贈者に対して減殺請求した後に、受贈者が目的物を第三者に譲渡した場合は、民法第1040条の適用を否定し、対抗要件に関する一般理論に基づいて解決するというのが判例の立場です<最判昭35.7.19>。
 ところで、民法第1040条では、「価額を弁償」とあり、これは、金銭による弁償を前提としているとされていますが、遺留分権利者が金銭による弁償の代わりに減殺の目的物の価額に相当する不動産を提供することに同意するのであれば、それも認められるものと考えられています。減殺請求による価額弁償の代わりに、受遺者固有の不動産を遺留分権利者に移転するというもので、この場合の登記原因は、「遺留分減殺請求による代物弁済」とするのが相当とされています。

以上です。


参考文献
判例民法10「相続」
登記研究第541号

※上記に関してお悩みの方は、必ず最寄りの専門家へご相談下さい。
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参考

民法
(受贈者が贈与の目的を譲渡した場合等)
第1040条  減殺を受けるべき受贈者が贈与の目的を他人に譲り渡したときは、遺留分権利者にその価額を弁償しなければならない。ただし、譲受人が譲渡の時において遺留分権利者に損害を加えることを知っていたときは、遺留分権利者は、これに対しても減殺を請求することができる。
2  前項の規定は、受贈者が贈与の目的につき権利を設定した場合について準用する。

判例
参考サイト(裁判所「判例情報」のサイトより。)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=53639&hanreiKbn=02
裁判年月日  昭和35年07月19日
法 廷 名  最高裁判所第三小法廷
判 示 事 項   
一 減殺請求後の転得者に対する減殺請求の許否
二 省略
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