相続・遺言・遺産承継
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遺言執行者がある場合の相続人からの登記申請の可否
Xさんは、孫のAさんに甲不動産を遺贈するという内容の公正証書遺言を作成しました。Xさんが亡くなったあと、Aさんはこの公正証書遺言を使って、甲不動産の名義変更の登記をしたいと司法書士に相談しました。
ところで、遺言による贈与(これを「遺贈」といいます。)で不動産登記を申請する場合、不動産を取得する人(受遺者)が、譲り渡す人(遺贈者)と共同して登記申請する必要がありますが、遺贈者はすでに亡くなっているので、代わってその相続人全員が申請人となります。ただし、遺言執行者がいれば、遺言執行者が受遺者と共同で登記申請することになるので、相続人の協力は不要になります。なお、遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができないとされています(民法1013条)。
さて、今回は困ったことに、この遺言執行者と連絡が取れなくなってしまいました。
このような場合、遺言執行者を無視して、受遺者と遺言者の相続人全員とで登記申請できるのか、という相談です。
これに関し、裁判の当事者適格の事案で、遺言執行者がある場合において、同人が登記申請に応じないときは、遺言執行者を被告として所有権移転登記手続を求める訴えを提起すべきであって相続人を被告として訴えを提起することはできないとする判例があります(最二小判昭43.5.31民集22巻5号1137頁)。
実際は管轄の登記所と相談して解決を図ることになるでしょうか、遺言執行者がある場合の登記申請はまずは遺言執行者が申請人となるべきであり、遺言者の相続人が遺言執行者に代わって申請人となることは、難しいのではないでしょうか。
以上です。
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参考条文
(遺言執行者の解任及び辞任)
民法1019条 遺言執行者がその任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人は、その解任を家庭裁判所に請求することができる。
2 遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。
※「その他正当な事由」とは、例えば、長期疾病、行方不明、長期不在や遺言執行者が相続人の一人に有利な取扱いをして公正な遺言の執行を期待できない場合などをいいます。
参考文献
「判決による登記」「実務解説遺言執行」「判例民法10」
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追記
上記記述は、平成30年民法改正前の内容です。最新の情報と異なる場合がありますので、ご了承ください。