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「商法改正による株式の譲渡制限の遍歴について」
先日、司法書士の実務研修の一環で会社法に関する講演会に参加してきました。講演の中で、実際にあった事例として典型的な家族経営であるS株式会社が、設立時から定款で株式の譲渡制限を設定しておらず、そのため内紛から株式が第三者へ譲渡され、少数派株主の対策に難儀したといった話がありました。
ところで、現在の株式会社制度のもとでは、株式の譲渡は自由に行うことができるのが原則ですが、会社法では定款で株式の譲渡に関し一定の制限を設けることができ、この場合、登記記録には、以下の文言が登記されます。
登記記録
「株式の譲渡制限に関する規定」
(一例)当会社の株式を譲渡により取得するには、代表取締役の承認を要する。
通常、家族経営でやっているような株式会社は株式の譲渡を制限することがほとんどであって、これにより、会社にとって好ましくない株主が算入し経営等に参画してくることを未然に防止することができます。
さて、上記の話で、なぜ、典型的な家族経営であるS株式会社が株式の譲渡制限を設定していなかったのでしょうか、、もちろん、単に設定をし忘れていただけなのかもしれません。ただ、これに関しては、以前も同様の事例がいくつかあって、調べたことがあります。
まず、現在の会社法は平成18年5月1日から施行されましたが、株式会社を対象とする法律としてこれより前は商法が適用されていました。商法は明治32年に制定されて以降、何度も改正が行われ、その中で株式の譲渡については、昭和25年商法改正で、これまで認められてきた株式の譲渡制限が禁止されることになりました。これは、定款による株式の譲渡制限は特に同族会社等でこれまでもよくあったが、昭和13年に有限会社が制定され、有限会社には譲渡制限が認められている以上、株式会社に認める必要はないといった判断や、設立時の発起人影響力が永続するような事態は好ましくないといったことから、譲渡制限が禁止されることになったようです。
その後、昭和41年商法改正で再び株式の譲渡制限が認められましたが、これより前に設立した株式会社は、当時、株式の譲渡制限が認めらなかったことになり、昭和41年復活のさいに、定款変更し、株式の譲渡制限を設定していないと、現在でも株式の譲渡制限を設定していない株式会社ということになります。
現在、実際に活動している株式会社の中には昭和42年以前に設立された会社はまだまだ存在しています。このような会社は、今一度、会社の定款や登記記録の内容を見直す必要があるかもしれません。
以上です。
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