<相談事例>
@私A(75歳)には、妻B(60歳)と長男C(35歳)がいます。長男Cは身体に障がいがあって、一人で自己の財産を管理することは困難な状況です。
A私はP会社を経営しており、会社経営はいずれ弟たちに任せる予定ですが、私と妻Bに相続が発生したあとの、長男Cが相続する財産については誰かに管理をお願いしようと考えています。
Bまた、長男Cの死後の財産の行き先がどうなるのか、これも気になります。
今からできる対策はありますか?
お悩み |
Aさん夫婦が元気なうちはいいが、将来の判断能力の低下や相続開始後は、どうしたらいいのか。 身体に障がいのあるお子様がいる親御様のお悩みの一つに、自分たちにもしものことがあった場合、子どもの財産管理をどうしたらいいのか、また、その子が亡くなったあと、残った財産はどうなるのかなどといったお悩みがあります。特にそのお子様に兄弟姉妹がおらず、遺言を残すことも難しい場合、最終的に残った財産は国庫に帰属することになります。
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対 策 |
Cさんのための財産管理を信託で行う。 Aさんが元気なうちからCさんのための財産管理に関する信託を設定します。Aさんの財産の一部を信託財産とすることで、Aさん死亡後も信託財産となった財産は相続財産とはならず(相続人の固有財産とならず)、受託者がAさんの意向(信託目的)に従って、Cさんのための財産管理をします。なお、状況に応じて、遺言信託とする方法、あるいは、自己信託として最初からCさんを受益者とする方法なども考えられます。
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結 果 |
受益者代理人等を指定し、適正な受益権を確保する。 受益者のCさんの受益権を代わりに行使してくれる「受益者代理人」や、受託者の信託事務を監督する機関として「信託監督人」など「信託当事者以外の者」をあらかじめ指定しておきます。これにより、Cさんのための適正な信託事務が実現できます。これらの者への就任には、受託者以外の者で信頼できる親族や、あるいは司法書士などの専門家を指定する方法があります。また、Cさんが亡くなって信託が終了した際の信託した残余財産の帰属先について、Aさんがあらかじめ信託行為で指定しておくこともできます。これは、任意後見制度やその他現行の法制度ではなしえない信託特有の効果といえます。
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上記事例は受託者についての検討をしておりませんが、実際のケースでは、誰を受託者とするのか、受託者は個人とするのか、あるいは法人とするのか、検討すべき課題があります。