2020年12月作成

共有不動産の悩みを信託で解決する場合のメリットと注意点 No.2

共有不動産を凍結させないための家族信託

 遺産分割でいったん共有となった不動産を将来にわたって適正に維持・管理していくために、あるいは、時期に応じた速やかな処分を可能とするためには、共有者全員が当該不動産を適正に管理する「受託者」を定めることで、その者に不動産の維持・管理や必要に応じた処分を任せるといった方法があります。このような方法を、「信託」といい、最近では、家族信託と呼ばれる方法が人気です。


共有不動産を信託すると、当事者の関係はどうなるのか?

 共有者は「委託者」という立場で共有不動産を受託者へ「信託譲渡」することで、固定資産税の支払いやその他の維持・管理、建物のメンテナンス等を受託者へ任せることになります。また、受託者に不動産の処分権を与えておくことで、受託者は売却等の処分行為を一人で行えることになります。

 この受託者になる人物の選任は、受託者としての必要な職務を適正に行える者であれば、共有者の中から選任してもいいし、第三者(法人も可)から選んで構いません。

 また、共有者は「受益者」という形で引き続き共有不動産の権利を有し続けることになります(不動産を受託者へ信託譲渡しても、共有者は当該不動産の権利を手放すわけではありません。)。したがって、たとえば、受託者が不動産を処分した場合に得られる対価は、受益者全員が取得することになります。さらに、受益者は、受託者の信託事務を管理・監督する権限があり、これにより受託者の適正な信託事務の遂行が可能となります。
 
       

共有不動産の悩みを家族信託によって解消する場合のメリットと注意点


管理の簡素化
・共有となっている登記名義を受託者名義へと一本化することで、不動産の管理や必要に応じた処分などがスムーズに行えます。また、火災保険や固定資産税等の通常の維持費や、建物修繕などの臨時の費用の支払いについても、受託者が管理する資金(信託財産)の中から清算すれば足ります。

課税の回避
・信託により登記名義を受託者へ渡しても、不動産の所有権は共有者(※受益者)に帰属しているとされるので、権利を手放すこととは異なります。このことから、税務上、信託をしても、贈与税や不動産取得税といった不動産の譲渡・取得にかかる課税は原則発生しません。

受益者による受託者の事務のチェック
・受益者には、受託者の事務を管理・監督する権限があるため、受託者が受益者の意思(信託の趣旨)に反し、勝手に財産を処分するようなことは認められません。

相続対策
・受益者(委託者)に相続が開始した場合でも、登記名義は受託者のままであって、二次相続などで共有者が次々と増えていくような事態にはならず、また、本来ならその都度発生するはずの相続による移転の登記費用(※)もかかりません。

(※)必要に応じて委託者・受益者の変更登記が必要になりますが、1物件につき1,000円と、通常の相続登記にかかる費用よりはるかに割安です。


注意点
・信託契約の内容(特に終了事由や終了時の不動産の帰属先等)や課税の確認を、事前にしっかり検討する必要があります。
・受託者を誰に選定するか、これが一番のポイントです。これに関しては、共有者で一般社団法人を設立し、その法人を受託者とする方法も考えられます。

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