2020年12月作成

共有不動産の悩みを信託で解決する場合のメリットと注意点 No.1

不動産を共有にすることは大きなリスクを含んでいます

 まず、一般的に、一つの不動産(土地や建物)を複数の人で共有すると、その後の管理・保全や必要なときの処分行為がスムーズに行えないことがあります。また、共有関係を解消しよう(単独所有とする)とすると、その際にかかる税金が負担となって、共有状態が解消できないといったケースがあります。

 この場合、その不動産は事実上「凍結」されるといった事態が生じます。特に、相続などによって不動産を兄弟姉妹の共有名義で取得した場合は、いずれ共有状態を解消しなければならなくなることがあり注意が必要です。

 次に、例として親が亡くなり、遺産分割協議を行った結果、ある不動産を子どもたちが共同で取得すると決まった場合、次のような登記がなされます。



親の不動産を子どもたち全員の名前で相続登記した登記簿の記載例

【 表  題  部  (土地の表示)  】   
所在:横浜市戸塚区戸塚町     
地番:100番│地目:宅地 │地積:125.00u│原因及び日付  省略 

【権利部(甲区)所有権に関する事項】
┃1番│所有権移転│昭和51年月日第 号 │原因 昭和50年10月1日 相続
   所有者 横浜市○○区△△町  番地    
          武 田 信 虎             

┃2番│所有権移転│平成30年月日第 号 │原因 平成30年10月1日 相続
   共有者 横浜市○○区△△町  番地    
       持分3分の1 武 田 晴 信        
       藤沢市△△町  番地     
         3分の1 武 田 繁 信       
       茅ヶ崎市△△町  番地    
         3分の1 武 田 某      
       


共有のままだと将来どのような問題が起こるか?

 遺産分割協議に基づいて、いったん、共有名義で相続の登記を入れた場合、その後、共有状態を解消しようと思ったら、共有者間で持分の売買や贈与、あるいは、他の不動産との交換といった特定の法律行為をする必要があります。このような手続きを経ない限り、この共有状態は原則、将来にわたって解消されることはありません。しかし、これらの法律行為はいずれも不動産の譲渡にかかる課税の対象となり、簡単にはできません。また、遺言で対処しようとしても、それが遺留分の対象となったり、相続税の2割加算の対象となったりとやっかいな問題が残ります。

 さらに、共有者の一人に相続が開始すると当該持分が次の相続人(その妻や子)へ承継されます。結果、共有者がますます増えていくこととなり、将来の不動産管理や処分に大きな支障をきたすおそれがあります。

 このように、当初の共有者は互いに仲が良く管理などに問題はないとしても、相続が発生するにつれ関係性が疎遠となり、将来の不動産の処分、あるいは共有状態の解消を図ろうと思っても、うまく話しが進まないといったことが想定されます。


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