平成31年3月作成

家族信託において委託者が複数いる場合の検討事項〜税務編〜

家族信託における税務の考え方(委託者が複数の場合)


<事例>

一つの信託行為で、委託者兼受益者を父及び母とし、父は評価5000万円の土地を、母は評価1000万円の建物を、受託者Tにそれぞれ信託譲渡しました。

<設定時の課税の考え方について>

いわゆる自益信託において、二人以上の委託者が同一の契約で信託を設定する場合、信託した財産の価額の割合と、設定する受益権の割合が異なるようなケースでは、信託することで財産が移転し、税務上、贈与の認定がなされる可能性があります。これを回避するには、受益権の割合を、信託した財産の価額の割合に応じ、上記事例なら、父5/6、母1/6と設定し、信託を通じて財産の移転はないものとします。

内容の異なる受益権の設定


上記のように、受益者の有する受益権の割合を、父5/6、母1/6と設定することで、設定時の贈与税課税の問題はクリアできると考えます。
ところで、この場合、父は信託財産全体に対し5/6の受益権を有し、母は信託財産全体に対し1/6の受益権を有すると考えると、信託の設定により、父が信託譲渡した土地の持分1/6が母に譲渡されたものとして、譲渡所得税の課税が考えられます(信託譲渡とした建物にについても同様の考え方が成り立ちます。)。
このような譲渡所得税を回避するためには、それぞれの受益者の有する受益権の権利の内容を個別に定める必要があると考えます。

また、信託期間中の受益者の変更や、信託終了時の残余財産受益者へ分配についても同様のことが当てはまるため、このうようなケースでは、受益者の有するそれぞれの受益権の権利の内容等を慎重に設定する必要があるといえます。


委託者をABC,受託者をA、受益者をABCとする信託


このような事例を検討する場合、前述の平成30年12月18日付け通知により不動産登記の局面においては一つの信託契約によるものとして一の登記申請で足りるとされましたが、税務の局面においては、設定時あるいは期中並びに終了時の予期せぬ課税をさけるため、受益者の有する受益権の割合や受益権の権利の内容等についてあらかじめ個別具体的に定める必要がある考えます。

以上


※この点につき、現状、明確な基準はなく、また、目立った事例等も見あたらないため、今後の検討課題として実務の流れを注視していく必要があります。

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