相続・遺言・遺産承継
戸籍と養子
テーマ
質問
昭和17年○月×日、Aを養子、甲・乙夫婦を養親とする養子縁組(養父甲、養母乙)がなされましたが、昭和19年、乙は、甲と離婚し、平成10年に死亡しています。
一方、Aの現在の戸籍には、乙を養親とする養子縁組に関する事項が抹消されずに残っています。この場合、養子Aを被相続人乙の相続人と認定することはできますか?
回答及び解説
相続登記の処理において、養子であるAを被相続人乙の相続人と認定することはできないと考えます。
昭和22年5月3日「民法の応急措置法」の施行前の民法(以下、「旧法」)下においては、養親自身が婚姻等によって他家から入籍した者である場合に、養親が離婚等により養家を去ると、その去家養親と養子との養親子関係は消滅します(旧民法730条第二項参照)。また、これによりいったん消滅した効果は、民法の応急措置法の施行によっても回復しません(同法附則一項)。なお、この場合の戸籍の記載については、養子Aの戸籍中氏名肩書にある養親乙の「氏名」及び養親との続柄「養子」とある記載を職権により抹消し、かつ、抹消した事由を戸籍の事項欄に記載するものとされています(大正5年・同13年通達)。
したがって、旧民法下において、養父母が離婚し、他家から入った養母が養家を去ったにもかかわらず、現在の養子Aの戸籍に養親乙の記載が抹消されず残っていたままだとしても、身分変動が発生した当時の法令を適用することによって、Aと乙との養親子関係は消滅し、存続していないものと判断できます。 このことから、養子Aを養親乙の相続人と認定することはできないものと考えます。
(参考文献「相続における戸籍の見方と登記手続」日本加除出版)
(後記)
旧民法730条第二項は、いわゆる「家制度」に基づく規定であるので、昭和22年5月3日「民法の応急措置法」の施行により廃止されました。したがって、同日以降の養親戸籍の変動については適用されません。
しかし、相続の開始したのが現行法下であっても、被相続人の身分変動(婚姻、縁組、離婚、離縁等)が旧法下で発生しているようなケースは、その当時の法令を適用し判断した上で、民法の応急措置法及び現行民法の適用を考慮する必要があります。とくに、旧法下での養親子関係の発生、変更、消滅に関しては、現行法と大きく異なる事例もあるので、十分注意する必要があります。
以上です。
ご注意
実際の個別案件に関しては、手続を依頼する最寄りの専門家へご相談ください。
不動産登記(売買、抵当権抹消、建物新築、増築)・相続/遺言・会社設立・成年後見・その他登記のことなら横浜の司法書士安西総合事務所にお任せ下さい。
旧民法下において養親が離婚によって養家を去った場合の養子縁組の効果について
質問
昭和17年○月×日、Aを養子、甲・乙夫婦を養親とする養子縁組(養父甲、養母乙)がなされましたが、昭和19年、乙は、甲と離婚し、平成10年に死亡しています。
一方、Aの現在の戸籍には、乙を養親とする養子縁組に関する事項が抹消されずに残っています。この場合、養子Aを被相続人乙の相続人と認定することはできますか?
回答及び解説
相続登記の処理において、養子であるAを被相続人乙の相続人と認定することはできないと考えます。
昭和22年5月3日「民法の応急措置法」の施行前の民法(以下、「旧法」)下においては、養親自身が婚姻等によって他家から入籍した者である場合に、養親が離婚等により養家を去ると、その去家養親と養子との養親子関係は消滅します(旧民法730条第二項参照)。また、これによりいったん消滅した効果は、民法の応急措置法の施行によっても回復しません(同法附則一項)。なお、この場合の戸籍の記載については、養子Aの戸籍中氏名肩書にある養親乙の「氏名」及び養親との続柄「養子」とある記載を職権により抹消し、かつ、抹消した事由を戸籍の事項欄に記載するものとされています(大正5年・同13年通達)。
したがって、旧民法下において、養父母が離婚し、他家から入った養母が養家を去ったにもかかわらず、現在の養子Aの戸籍に養親乙の記載が抹消されず残っていたままだとしても、身分変動が発生した当時の法令を適用することによって、Aと乙との養親子関係は消滅し、存続していないものと判断できます。 このことから、養子Aを養親乙の相続人と認定することはできないものと考えます。
(参考文献「相続における戸籍の見方と登記手続」日本加除出版)
(後記)
旧民法730条第二項は、いわゆる「家制度」に基づく規定であるので、昭和22年5月3日「民法の応急措置法」の施行により廃止されました。したがって、同日以降の養親戸籍の変動については適用されません。
しかし、相続の開始したのが現行法下であっても、被相続人の身分変動(婚姻、縁組、離婚、離縁等)が旧法下で発生しているようなケースは、その当時の法令を適用し判断した上で、民法の応急措置法及び現行民法の適用を考慮する必要があります。とくに、旧法下での養親子関係の発生、変更、消滅に関しては、現行法と大きく異なる事例もあるので、十分注意する必要があります。
以上です。
ご注意
実際の個別案件に関しては、手続を依頼する最寄りの専門家へご相談ください。