相続・遺言・遺産承継

相続登記

テーマ

「法定相続の登記後に遺言書が発見された場合の登記手続について」


質問
 甲不動産につき,A及びB名義とする共同相続の登記をしたあと,Aに甲不動産を遺贈するとする遺言書が発見されました。この場合,どのように登記の名義を変更したらいいのでしょうか?

回答
 A及びB名義の共同相続の登記を,Aの単独名義に更正登記する必要があります。また,登記原因が「遺贈」になりますので,登記原因も「相続」から「遺贈」に更正登記する必要があります。

解説
 甲不動産につき,A・Bの共同相続登記をしたあと,A一人に甲不動産を遺贈するという遺言書が発見された場合,甲不動産は,Aが遺贈の放棄をしない限り,Aの単独所有になります。
 従って,A・Bの共同相続登記は誤りであったということになりますが,ただ,この登記もAの持分の限度においては有効であるので,これを全部抹消するのではなく,Aの単独名義とする登記に更正する必要があります。この更正登記の手続きは、持分の増加するAを登記権利者とし,持分の減少するBを登記義務者として,AとBの共同申請で登記します。登録免許税は,1,000円(不動産一につき,1,000円)です。
 なお,A・B以外のものに甲不動産を遺贈するとする遺言書が見つかった場合には,AとBは甲不動産をはじめから相続していなかったことになるので,いったんA・Bの共同相続登記を抹消した上で,遺贈を原因とし,遺言者から受遺者へ所有権の移転登記を申請します。この移転登記の手続きは,受遺者を権利者とし,遺言執行者(遺言執行者がいない場合は相続人)を登記義務者として行います。


以上です。

参考文献 「登記インターネット126号」

メモ)
 妻甲及び長男乙に所有する土地を2分の1ずつ相続させる旨の遺言をしたが、遺言者の死亡前に甲が死亡し、その後遺言者が本土地の持分2分の1を処分した場合において、この遺言に基づく相続を原因とする乙への所有権の移転登記は受理されるかにつき、平成5.6.3民三第4308号民事局第三課長回答参照

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(参考)
□相続登記の更正登記の受否(登研533号)
《相続登記手続(遺産相続)》《更正登記》
 ○要旨 相続人甲・乙・丙のための共同相続の登記がされている土地について、当該土地は「丙に相続させる。」旨の遺言書を添付し、丙の単独申請により、丙の単独とする右相続登記の更正登記の申請は、受理されない。
 ▽問 被相続人A名義の土地について、Aの共同相続人甲・乙・丙のうち甲の単独申請により相続人全員(3名)のための相続登記をしたが、当該土地については「丙に相続させる。」旨のAの遺言があることが判明したとして、丙の単独申請により、右遺言書を添付し、右相続登記を丙単独とする更正登記の申請がされたが、当該申請は、受理して差し支えないものと考えますが、いかがでしょうか。
 ◇答 受理できないものと考えます。所問の更正登記は、丙を登記権利者、甲・乙を登記義務者とし、これらの者の共同申請によるべきものと考えます。

□共同相続の登記がされた不動産を単独相続の登記に是正する手続

 相続人中の1名に対して「相続させる」旨の遺言がされた相続財産について共同相続の登記がされた場合の更正手続は、共同相続の登記を単独相続の登記に更正する手続によるのが相当である。
(平2.1.20、民三第156号民事局第三課長回答)
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