相続・遺言・遺産承継
遺産分割と登記
テーマ
「未成年者と親権者間の利益相反行為について(遺産分割協議編)」
質問
共同相続人の中に数人の未成年者がいる場合の遺産分割協議の方法について教えてください。
回答及び解説
親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために
特別代理人の選任
を家庭裁判所に申立てしなければなりません(民法826U)。例えば、夫Aの相続が開始し、Aの妻であるBと、Bの親権に服する数人の未成年者の子が相続人となって、亡Aの遺産分割協議をするためには、
未成年者一人ごとに異なる特別代理人を選任する必要があります。
なお、BにAの相続権がないような場合(例、協議離婚をしていた場合や相続放棄をした場合等)は、未成年者のうちの一人については親権者であるBが代理することができ、その他の未成年者について特別代理人を選任する必要があります。実際に家庭裁判所へ特別代理人選任の申立をする場合の申立先裁判所は、子の住所地を管轄する家庭裁判所になります。また、申立の際は、利益相反関係を証明する書類として、遺産分割協議等の案を添付します。裁判所は、添付された案が本人にとって不利益な内容となっていないか等を審査します。遺産分割協議の内容が未成年本人にとって不利益な内容であれば、申立人は、たとえば、換価分割や代償分割が出来ない事情を証明できる程度の関係資料、その旨の上申書などを提出する必要があります。
ところで、
遺言書があれば、原則、遺産分割協議は不要
となります。相続人の子が未成年である場合などは、遺産分割協議が大変になります
から、実務では遺言書を準備しておくことを強くお勧めします。☆遺言書の作成については、
遺言書を作成しておきましょう〜死後への配慮と相続対策〜 をご参照ください☆
参考
登記研究140.45
親権者Aが自己の債務の担保として、A及び未成年者の子BC共有の不動産に抵当権を設定する行為は利益相反行為なるが、BCのため格別に特別代理人を選任する必要はなく、一名の特別代理人だけでBCを代理することができる(参考文献 「利益相反の登記実務」青山修著)。