2019年6月作成

遺産分割に関する見直し〜預貯金の仮払いの手続について〜

2019年7月1日から始まる相続手続の改正ポイントをいくつか紹介します。

一部の相続人から預貯金の払戻しをする際の手続と注意点

新制度のポイント
 
亡くなった人の預貯金について、遺産分割協議の前でも払戻しが受けられる新たな制度が始まります。



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故人の預貯金の払戻しの方法

実際の払戻しは、銀行の窓口で直接受けることになります。必要書類は銀行によって異なりますが、通常は、以下の書類を用意します。

@被相続人の除戸籍謄本一式
A払出を受ける相続人の戸籍謄本(被相続人との関係が判明するもの)及び印鑑証明書、実印、その他本人確認書類

※従来、払戻しに必要だった遺言書や相続人全員の同意書は不要
※@及びAの資料の一部につき法務局発行の「法定相続情報一覧図」での対応も可


払戻しのできる金額の確認

 払戻できる金額には、「相続開始時の預貯金残高×1/3×法定相続分(その相続人の法定取り分)」という上限額が決められています。また、金融機関ごとに150万円までとされています(詳しくは前回の記述を参照ください。)。

 また、払戻しを受けた金額については、払戻しを受けた相続人が遺産の一部分割によりこれを取得したものとみなされます。従って、仮に、払戻しを受けた金額がその相続人の具体的相続分を超過している場合は、後日、その超過部分を遺産分割協議等の手続において清算する必要があります。

払い戻す際の注意点は?

 葬儀費用その他相続に伴う必要経費として、一部の相続人が他の相続人の同意を得ず、故人のキャッシュカードを使ってATMから預金を引き出したり、あるいは、本人と称し届出印を利用して多額の金額を銀行窓口から払い戻すケースは、実際あります。
 今回の改正によって、一部の相続人からの払戻し手続が認められるわけですが、注意点としては、上記のように被相続人のキャッシュカードや届出印を利用して預貯金の払戻しを受けた場合、銀行はこれらの払戻し手続が今回の改正によって認められた「正規」の払戻による手続であるかどうかを判断できないことになります。
 なお、これらの方法による払戻し手続は、後日、相続人間でトラブルの原因となることが少なくないため避けるべきと考えます。

参考
【改正民法909条の2】
 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に第900条及び第901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。



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