相続・遺言・遺産承継

遺言に条件や負担を付けることができます


 遺言は、その効力発生時(通常は、遺言者の死亡時)に直ちに、何ら負担もなく受遺者に財産が承継されるものですが、

遺言の中で財産をもらう人(受遺者)に対し、一定の条件や負担をつけることができます。

このような遺言を「停止条件付遺贈」、又は「負担付遺贈」と一般的にいいますが、書いた条件や負担の内容が不明確だと、遺言の解釈をめぐり相続人間でトラブルが発生するおそれがあるので注意が必要です。
ここでは遺言に条件や負担をつける場合の一般的な条項や両者の違い等をまとめてみます。


参考条文
民法
(遺言の効力の発生時期)
第985条 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
2 遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。

@停止条件付遺贈

 停止条件付遺贈とは、遺言の効力発生時期を、遺言者が死亡し、かつ一定の条件が整ったときにはじめて効力が発生する内容とする遺言のことをいい、たとえば、孫が婚姻をしたときは、現金500万円を孫に遺贈するといった場合〇〇大学を卒業したときは土地及び建物を遺贈するといった場合などがあげられます。

遺言の内容が停止条件付遺贈と解される場合、遺言者が死亡しても条件が成就するまではその効力は発生しません。

(これに関し、相続税の申告が必要な事例については、相続税基本通達11の2の8参照)。


参考
(停止条件付遺贈があった場合の課税価格の計算)
11の2−8 停止条件付の遺贈があった場合において当該条件の成就前に相続税の申告書を提出するとき又は更正若しくは決定をするときは、当該遺贈の目的となった財産については、相続人が民法第900条(法定相続分)から第902条(遺言による相続分の指定)まで及び第903条(特別受益者の相続分)の規定による相続分によって当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする。ただし、当該財産の分割があり、その分割が当該相続分の割合に従ってされなかった場合において当該分割により取得した財産を基礎として申告があった場合においては、その申告を認めても差し支えないものとする。

A負担付遺贈

 負担付遺贈とは、停止条件付遺贈と似ている部分もありますが、受遺者に法律上の一定の義務を負担させるものであって、たとえば、長男に自宅を遺贈する代わりに、(遺言者の)妻と自宅で同居し、終身に渡り妻の面倒を看るといった場合などが挙げられます。

停止条件付遺贈と異なり、遺言者の死亡によって、遺言の効力は発生しますが、受遺者には負担を履行する法的義務が生じます。

 受遺者が(遺産だけをもらっておいて)その負担を履行しないようなとき、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができます。そして、その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができます(詳しくは民法1027条参照)。 


参考;相続税の課税価格
(負担付遺贈があった場合の課税価格の計算)
11の2−7 負担付遺贈により取得した財産の価額は、負担がないものとした場合における当該財産の価額から当該負担額(当該遺贈のあった時において確実と認められる金額に限る。)を控除した価額によるものとする。

B停止条件付遺贈と負担付遺贈の区別

  停止条件付遺贈と負担付遺贈は、それぞれの効力発生時期が異なっていることや、受遺者に一定の法律義務が生じるかどうか(さらには家庭裁判所へ遺言の取消しを求めることができるか)など、その違いは明確ですが、実際の遺言書ではどちらを意図しているのか判断に迷うケースもあると思います。その場合、最終的には、遺言書を合理的に解釈する必要があり、遺言書の解釈について、昭和58.3.18最高裁判決では、遺言書の全文と当該条項との関係性や、作成時の事情、遺言者の置かれた状況等を考慮して遺言者の真意を探求し、当該条項の趣旨を確定するものとしています。

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「甥が私の事業を引き継ぐことを前提に、全財産を甥に遺贈したい」
「長男に財産の大半を譲る代わりに、長男には妻の介護をしてほしい」

 
 このような願いを条件付遺贈又は負担付遺贈として遺言書に残しておくことはできますが、
何をもって事業を引き継いだと判断するべきなのか(たとえば、甥が代表取締役に就任すればそれで条件が成就したといえるのかなどの問題が残ります)
どこまで世話をすれば負担は履行されているといえるのか(介護の範囲や程度の問題)
といった解釈を巡って、相続人関係者の間でしばしばトラブルが発生します。
 遺言書に書いておくべき条件や負担の内容等について解釈があいまいにならないよう工夫することが重要と考えます。

 遺言書の作成でお悩みの方は、司法書士安西総合事務所へお気軽にご相談ください。

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