相続・遺言・遺産承継

遺言の撤回とその効果

テーマ

内容が一部抵触する複数の遺言書があった場合の考え方について

事例 1
 Aさんは、長男Bに対し、すべての財産を相続させるとする内容の遺言書(第一遺言)を作成しましたが、数年後、すべての不動産を長女Cに相続させるとする内容の遺言書を作成しました。このような事例において、Aさんが死亡した場合、それぞれの遺言は、どのように扱われますか。

回答
 第一遺言、第二遺言いずれの遺言も有効と考えますが、第二遺言によって、第一遺言の一部が撤回されたとみなし、不動産の全部は長女が相続し、その他の財産は、長男が相続することになります。

解説
 民法では、遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができるとされていて(民法1022条)、前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます(民法1023条)。
 したがって、Aさんの遺言の解釈として、不動産に関しては、第一遺言と第二遺言の内容が抵触するため、その部分において、第一遺言(つまり長男に不動産を相続させるとする部分)は撤回されたものとみなされます。

遺言の撤回とその効果 2

遺言の撤回の効果と考え方について

事例 2
 Aさんは、長男Bに対し、すべての財産を相続させるとする内容の遺言書(第一遺言)を作成しましたが、数年後、すべての財産を長女Cに相続させるとする内容の遺言書(第二遺言)を作成しました。その後、Aさんはさらに第三遺言にて、「第二遺言はすべて撤回します。」と書きました。このような事例において、Aさんが死亡した場合、それぞれの遺言は、どのように扱われますか。

回答
 第一遺言、第二遺言ともに無効と考えます。

解説
 民法では、撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない(民法1025条本文)とされています。この規定は、一度、適法に撤回された遺言は、後にその撤回行為が撤回等されたとしても、原則、一度撤回された遺言は復活しないことを法定したものと解されています(非復活主義)。
 Aさんが、第二遺言を撤回したとしても、それをもって、第一遺言を復活させる意思があるとは限らないと考えられるからです。なお、第二遺言は適法にすべてが撤回されているため、第二遺言が効力を生じることはありません。
 

遺言の撤回とその効果 3

遺言の撤回と原遺言の復活の可能性について

事例 3
 Aさんは、長男Bに対し、すべての財産を相続させるとする内容の遺言書(第一遺言)を作成しましたが、数年後、すべての財産を長女Cに相続させるとする内容の遺言書(第二遺言)を作成しました。その後、Aさんはさらに第三遺言にて、「第二遺言はすべて無効とし、第一遺言を有効とする。」と書きました。このような事例において、Aさんが死亡した場合、それぞれの遺言は、どのように扱われますか。

回答
 第一遺言が有効(復活したもの)と考えます。

解説
 民法では、撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない(民法1025条本文)とされています。この規定は、一度、適法に撤回された遺言は、後にその撤回行為が撤回等されたとしても、原則、一度撤回された遺言は復活しないことを法定したものと解されています(非復活主義)。
 しかし、遺言無効訴訟に関する最高裁平成9年11月13日判決によると、「亡A(遺言者)は、乙遺言(第2遺言)をもって甲遺言(第1遺言)を撤回し、更に丙遺言(第3遺言)をもって乙遺言を撤回したものであり、丙遺言書の記載によれば、亡Aが原遺言である甲遺言を復活させることを希望していたことがあきらかである」として、「甲遺言をもって有効な遺言と認めるのが相当である。」と判旨しています(※カッコ内追記)。つまり、遺言者の意思として、第一遺言の復活を望んでいることが明らかである場合はその意思が尊重されるべきであり、非復活主義の例外に当たるということになります。
 

司法書士に相談する重要性

遺言作成におけるリスクと専門家への相談の重要性

 遺言は、ご自身の財産をどのように引き継ぎたいかを明確にする重要な手段です。しかし、複数の遺言を作成した場合、それらの内容が一部または全体で抵触すると、相続時に複雑な問題を引き起こす可能性があります。
 たとえば、後の遺言によって前の遺言が一部撤回されたり、複数の遺言書が存在することで相続人間で解釈が異なり、争いが生じるリスクがあります。また、一度撤回された遺言が原則として復活しないという「非復活主義」など、法律には専門的な知識を要する複雑なルールもあります。
 こうしたリスクを回避し、ご自身の意思を確実に反映するためには、遺言作成の段階で専門家に相談することが極めて重要です。司法書士は、法律の専門知識を持ち、遺言書の作成から管理、相続時のスムーズな実現までを支援するプロフェッショナルです。専門家の助言を受けることで、無用なトラブルを防ぎ、円満な相続を実現することが可能です。

遺言は、ご自身の大切な想いを未来に託すものです。その意思を確実に実現するために、ぜひ一度、司法書士にご相談ください。

相続、遺言の手続なら横浜の司法書士安西総合事務所へお任せください。

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