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「民法(相続関係)の改正と不動産登記について 2」


前回、遺言による不動産の物件変動について、その定め方によって、不動産の対抗要件を備える必要性(登記の名義を変更する必要性)の有無が異なるということを書きました。

@遺言者が遺言で相続分を指定した場合、不動産の取得者は民法第177条(※)の第三者に該当せず、登記なくして当該不動産の権利取得を第三者に対抗できるとしています。
A遺言者が遺言で相続させる旨の遺言をした場合、特段の事情がない限り、これは遺産分割方法の指定に当たり、不動産の取得者は民法第177条の第三者に該当せず、登記なくして当該不動産の権利取得を第三者に対抗できるとしています。
B遺言者が遺言で遺贈をした場合は、これは通常の贈与と同様、被相続人の意思表示による物権変動であり、不動産の権利取得者は民法第177条に規定する第三者に該当するため、登記なくして当該不動産の取得を第三者に対抗することはできないとしています。

(※)民法177条では、不動産に関する物件の得喪及び変更は、登記手続をしなければ、第三者へ対抗することはできないと定めています。これは簡単に説明すると、ある不動産を取得したら、その登記をちゃんとしておかないと、原則、他の人に取得したことを主張できませんよ、という意味です。これにより、不動産の取引をする人は、登記記録の内容を確認することによって、安心して取引等を行うことができます。

法制審議会民法(相続関係)部会の中間試案では、上記@Aの場合に登記を不要と解することは、取引の安全を害し、登記制度の信頼の低下に繋がるとの懸念から、@Aについても、Bと同様に、不動産の取得者は、登記なくして当該不動産の取得を第三者に対抗することはできないとして、従来の解釈を変更する方向で取りまとめたようです。

これにより、遺言で法定相続分を超える相続分を取得する相続人は、登記等を備えないとその超えた部分について第三者へ対抗することができないことになり、登記記録を基にして行う現在の不動産取引の実務を重視したものといえそうです。
 
以上です


・上記内容は、2017年7月21日時点の情報です。
・あくまで中間試案であり、将来、このとおりに改正されるか現時点では未定です。
・今回の相続関係の見直しでは、そのほかに、配偶者の居住権の問題、遺産分割の見直し、遺言制度の見直し、遺留分の見直し等、日常生活に密接に繋がる内容の改正が多く含まれています。今後も、定期的にまとめていきます。

参考
〜以下、日経新聞のサイトより。〜
法務省は8月上旬から約1カ月半、パブリックコメント(意見公募)を実施する。公募の結果を踏まえ、年内にも要綱案をとりまとめ、来年の通常国会で民法改正案の提出を目指す。


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