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「民法(相続関係)の改正と不動産登記について」
これまでの我が国の民法の相続に関連する大きな改正としては、以下の改正点があります。
(具体的な改正点)
・昭和37年7月1日改正・・・同時死亡の推定(§32の2)の新設、代襲相続規定(§887)、相続放棄に関する規定(§939)の改正
・昭和56年1月1日改正・・・相続人の相続分割合について、現在の相続分とする改正(§900)、さらに、兄弟姉妹の代襲相続に関する規定(§889U)の改正
・昭和63年1月1日改正・・・夫婦共同縁組に関する規定の改正(§795)
・平成25年12月11日改正・・・嫡出子でない子の相続分は、嫡出子である子の相続分の2分の1とする(§900Cただし書の前半部分)を削除
そして、現在、法制審議会民法(相続関係)部会において相続関係の改正に向けた議論が行われ、2016年6月21日、いわゆる「中間試案」がとりまとめられました。その後もおおよそ月一くらいで部会が開催されているようであり、会議の詳細な内容は「法制審議会−民法(相続関係)部会にアップされています。
その中で、実務における不動産登記との関係で気になる内容がありましたので、以下、備忘録としてまとめてみます。
遺言による不動産の権利取得と民法177条との関係ですが、現在の判例によると、おおよそ次のような解釈になります。
@遺言者が遺言で相続分を指定した場合、不動産の取得者は民法第177条の第三者に該当せず、登記なくして当該不動産の権利取得を第三者に対抗できる。
A遺言者が遺言で相続させる旨の遺言をした場合、特段の事情がない限り、これは遺産分割方法の指定に当たり、不動産の取得者は民法第177条の第三者に該当せず、登記なくして当該不動産の権利取得を第三者に対抗できる。
B遺言者が遺言で遺贈をした場合は、これは通常の贈与と同様、被相続人の意思表示による物権変動であり、不動産の権利取得者は民法第177条に規定する第三者に該当するため、登記なくして当該不動産の取得を第三者に対抗することはできない。
このように@・A・Bともに、遺言による物権変動にも関わらず、@・Aは、相続という包括承継という扱いから物件取得を第三者へ対抗するための登記は不要と解し、他方、Bについては、特定承継であることから、物件取得を第三者へ対抗するためには登記を必要と結論付けています。
今回の法制審議会における相続関係の改正は、ある意味、この不均衡な扱いを修正するものとなっているようです。
続きはこちら
以上です。
参考(裁判所の検索サイトより)
@につき、平成5年7月19日 http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=63014
A につき、平成14年6月10日 http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62433
B につき、昭和39年3月6日 http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53059
「民法(相続関係)の改正と不動産登記について」
これまでの我が国の民法の相続に関連する大きな改正としては、以下の改正点があります。
(具体的な改正点)
・昭和37年7月1日改正・・・同時死亡の推定(§32の2)の新設、代襲相続規定(§887)、相続放棄に関する規定(§939)の改正
・昭和56年1月1日改正・・・相続人の相続分割合について、現在の相続分とする改正(§900)、さらに、兄弟姉妹の代襲相続に関する規定(§889U)の改正
・昭和63年1月1日改正・・・夫婦共同縁組に関する規定の改正(§795)
・平成25年12月11日改正・・・嫡出子でない子の相続分は、嫡出子である子の相続分の2分の1とする(§900Cただし書の前半部分)を削除
そして、現在、法制審議会民法(相続関係)部会において相続関係の改正に向けた議論が行われ、2016年6月21日、いわゆる「中間試案」がとりまとめられました。その後もおおよそ月一くらいで部会が開催されているようであり、会議の詳細な内容は「法制審議会−民法(相続関係)部会にアップされています。
その中で、実務における不動産登記との関係で気になる内容がありましたので、以下、備忘録としてまとめてみます。
遺言による不動産の権利取得と民法177条との関係ですが、現在の判例によると、おおよそ次のような解釈になります。
@遺言者が遺言で相続分を指定した場合、不動産の取得者は民法第177条の第三者に該当せず、登記なくして当該不動産の権利取得を第三者に対抗できる。
A遺言者が遺言で相続させる旨の遺言をした場合、特段の事情がない限り、これは遺産分割方法の指定に当たり、不動産の取得者は民法第177条の第三者に該当せず、登記なくして当該不動産の権利取得を第三者に対抗できる。
B遺言者が遺言で遺贈をした場合は、これは通常の贈与と同様、被相続人の意思表示による物権変動であり、不動産の権利取得者は民法第177条に規定する第三者に該当するため、登記なくして当該不動産の取得を第三者に対抗することはできない。
このように@・A・Bともに、遺言による物権変動にも関わらず、@・Aは、相続という包括承継という扱いから物件取得を第三者へ対抗するための登記は不要と解し、他方、Bについては、特定承継であることから、物件取得を第三者へ対抗するためには登記を必要と結論付けています。
今回の法制審議会における相続関係の改正は、ある意味、この不均衡な扱いを修正するものとなっているようです。
続きはこちら
以上です。
参考(裁判所の検索サイトより)
@につき、平成5年7月19日 http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=63014
A につき、平成14年6月10日 http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62433
B につき、昭和39年3月6日 http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53059
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